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夫や妻・彼氏や彼女の行動が知りたい等でこっそりと行動を追っていると違法になる可能性があります。ならば、探偵が調査で尾行をすると違法にならないのでしょうか?
どのような行動がどういった法令に違反してしまうのか、また探偵の尾行は違法にならないのか、詳しく解説します。
どんな時に尾行する?
今まで誰かを尾行したいと思ったことがあるでしょうか?もしかしたら「彼氏・彼女が浮気をしているかもしれないから尾行して真実を確かめたい…」「外回りをしている社員が仕事をサボってないか行動を追跡したい」「債務者の給料を差押さるため出勤を尾行して職場を調べたい」「子供の非行が心配で後をつけてみたい」そんな風に考えたことがある人もいるのではないでしょうか?
尾行をしたいと思ったことがあったとしても理由は人それぞれだとは思いますが、その時に尾行していたとしたら、法令に抵触していたかもしれません。もしくはこれから尾行を考えている人は違法行為を犯してしまう可能性があるので気を付けてください。
尾行は相手の事を調べる有効な手段ですが、その分やり方を間違えると違法となる危険な方法でもあります。
尾行はどんな法令に抵触するのか
悪い言い方をすると、尾行は相手にバレないように隠れてコソコソ後を付け回す行為であり、確かに悪い事をしているような行動に感じます。尾行自体は違法行為ではないのですが、尾行がつきまとい行為や監視行為などとなった場合に違法となる可能性があります。
では、尾行はどのような法令に触れる可能性があるのか詳しく解説していきます。
- ストーカー規制法【ストーカー行為等の規制等に関する法律】
- 迷惑防止条例
- 軽犯罪法
これら3つの法令について見てみましょう。
ストーカー規制法【ストーカー行為等の規制等に関する法律】
尾行はストーカー規制法に抵触する可能性があります。ストーカー規制法では特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、下記1~10の行為を規制しています。
- つきまとい・待ち伏せ・うろつき・押しかけなど
- 監視していると告げる行為
- 面会や交際などを要求する
- 乱暴な言動
- 無言電話やメール・FAX・SNS・文章などを拒否されているのに送る
- 汚物や動物の死体などを送る
- 名誉を傷つける行為
- 性的羞恥心を侵害する行為
- 相手に無許可でGPS機器などにより位置情報を取得する
- 相手に無許可で相手の所持するものにGPS機器などを取り付ける
該当する行為を行った際には警察から警告を受けたり各都道府県の公安委員会を通じて禁止命令が出されます。
また、これらの行為を反復して行えばストーカー行為となり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。
さらに、禁止命令が出ているにも関わらず、なおストーカー行為を行った際はより重い2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されることになります。
迷惑防止条例
各都道府県では地域の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為などを防止し、秩序や安全を維持したり住民の質を向上する事などを目的として、迷惑防止条例を独自に定めています。
都道府県ごとで詳細な内容については異なる部分がありますが、千葉県の迷惑防止条例【正式名称:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例】の一部を例に挙げれば
- 粗暴行為(第3条)
- 卑わいな行為(第3条の2)
- たかり行為(第4条)
- 押売行為(第5条)
- 不当な客引き行為(第7条)
- つきまとい行為(第11条)
- 電話などによる嫌がらせ行為(第12条)
参考:千葉県警公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
こういったさまざまな迷惑行為に対し条文が明記されています。
迷惑行為に対する罰則は条文に対しそれぞれ規定されていて、つきまとい行為(第11条)に対する罰則は、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
ストーカー規制法においては恋愛感情や怨恨の感情からの行動に対する禁止行為である一方、迷惑防止条例においてのつきまとい行為では恋愛感情が無くても、特定の者に対し著しく不安又は迷惑を覚えさせるような方法で行った場合に規制の対象になります。
軽犯罪法
軽犯罪法では33の行為が禁止されており、つきまとい行為についても第28号で追随等の罪が規定されています。
この規定では
- 他人の進路に立ちふさがる事
- 他人の身辺に群がって立ち退かない事
- 不安や迷惑を覚えさせるような方法で他人につきまとう事
を禁止しており、これに違反すると拘留(最短で1日~最長29日)または科料(最低1000円~最高9999円)に処されます。
刑としては懲役や罰金よりも軽いですが、前科がつきますし場合によっては逮捕される可能性も否めません。
バレなければいい?
そもそも、尾行がバレなければつきまとい行為や監視行為にならないから大丈夫だろうと考えていたら痛い目を見るかもしれません。確かにバレなければ問題にならないかもしれませんが、尾行と言う調査方法は非常に難易度の高いもので、調査対象者と面識のある人が行うと更にリスクが高くなります。
自分で行えば費用もかからないし、時間さえあればできると思うかもしれませんが、一般の方が行うと違法行為になる可能性が高く、一か八かでやるような簡単な調査ではありません。
バレなければいいだろうという考えで行うのではなく、もし自分で尾行するとしたらバレた時にどうなるかまで考えて行うべきです。
探偵はあらゆる法令に則って調査を行う
探偵が調査において尾行する事はよくある事です。尾行以外にも張り込みや聞き込み、隠れて撮影する等違法になりそうな調査が多いように感じますが、正式な探偵ならば全ての法令に則りながら調査を行います。
尾行を行う上で抵触しそうなストーカー規制法や迷惑防止条例はもちろん、その他の一般的な法律や探偵が探偵業を営む上で守らなければいけない法律もあります。
探偵の尾行が合法である理由
探偵になるための国家資格などは特に必要ありませんが、探偵が探偵業を営むには警察署に探偵業届出書を提出し公安委員会から許可を得て許可証を発行してもらう必要があります。許可を得た探偵は探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)と言う法律に則りながら業務を行わなければ懲役・罰金や業務停止・廃止の命令が出される可能性もあります。
探偵業法について少し内容を見てみましょう。
探偵業の業務の適正化に関する法律【一部抜粋】
(定義)
法第2条
第1項(探偵業務の定義)
この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務を行う営業をいう。
(探偵業務の実施の原則)
法第6条
探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者(以下「探偵業者等」という。)は、探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。
探偵業法の第2条では、探偵の業務は依頼者に関わるものを収集する目的で尾行などの調査を行い依頼者に報告する事であると定義されています。
このことからも、探偵の行う尾行やその他の調査はストーカー規制法や迷惑防止条例に触れる感情とは合致しない目的であるため、依頼者から正式に依頼を受けた調査である場合探偵が尾行を行ってもこれらの法令に触れることはありません。
また、探偵業法の第6条に規定されている通り、探偵であっても一般的に禁止・制限されている法律をかいくぐる事ができるわけではないので、合法の範囲内で調査を行います。
規定にもある通り探偵であっても対象者の生活の平穏を害する不安や恐怖を与えるような調査は違法となります。
探偵の尾行が合法なのは探偵が違法にならない範囲で行った場合に限られる事であり、もし探偵が尾行中に住居侵入したとすれば当然違法行為となりますし、対象者が平穏に生活する権利を侵害する調査は探偵であっても行ってはいけません。
探偵の尾行やその他の調査が違法にならないためには、さまざまな法律知識と調査能力も必要不可欠です。
自分で尾行する時の注意点
先述した通り、尾行調査を行う際はつきまとい行為でストーカー規制法や迷惑防止条例などに抵触する可能性が高くなりますので注意が必要です。
また、その他にも注意するべき点がありますので解説いたします。
- GPS機器の使い方に注意
- 私有地に入らないように注意
- 事故に注意
- 対象者に気づかれないように注意
これら4つの注意点について詳しく説明いたします。
GPS機器の使い方に注意
尾行と言えばGPS機器を思い浮かべる方もいるかと思います。
尾行ではつきまとい行為に注意しなければいけませんが、ストーカー規制法ではGPS機器の使用方法も規制対象になっているため、GPS機器の利用する場合には注意が必要です。
GPS機器はネットで購入出来たり手軽にレンタルしたりする事も可能で、一般の方にも身近な調査機器になっています。そのためお子様の見守りや老人の徘徊対策、盗難などセキュリティー強化のために利用する人もいます。
GPS機器は、その装置を設置するだけで簡単に相手の位置情報が特定できるため、もはや尾行が不必要になるほど便利なものです。
その手軽さと利便性からストーカーが悪用する事案が増え令和3年8月にストーカー規制法が改正され、GPSの利用について厳しい制定がされました。
GPS機器は浮気調査でも利用されることがありますが、たとえ夫婦であっても相手の所有物にGPS機器を仕掛ける行為はストーカー規制法に抵触する可能性があります。よって、仕掛ける場所は自分の所有物もしくは共有財産に限られます。
共有財産とは、夫婦が結婚した後に協力して入手した財産のことで、たとえば同居中の自宅や自家用車などがその一例です。名義がどちらかであっても共有財産に変わりはありません。
また、GPS機器の利用に関する規制はストーカー規制法だけでなく各自治体の迷惑防止条例でも規制対象になりつつあります。
恋愛感情のない相手に対してであっても尾行にGPS機器を利用するのなら、他人の所有物に設置する事のないように気を付けてください。
私有地に入らないように注意
尾行をする際は対象者を見失わないように、かつ気づかれないように後をつける必要があります。その過程において、つい他人の私有地に侵入してしまった場合、住居侵入という違法行為となる可能性があります。
住居侵入罪で刑罰を受ける事になった場合、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。
事故に注意
尾行の際の移動手段は「徒歩」「自転車」「車」「公共の乗り物」などさまざまなのですが、尾行に集中しすぎるあまり、周りが見えなくなってしまう事があります。
周囲の人にケガをさせたり自分自身がケガをする危険があるので事故には十分注意しましょう。
また、道路交通法違反にも注意してください。
「ここで対象者とはぐれたら見失ってしまう…」と、信号無視をしたり一旦停止を怠ったりするととんでもない事故になって取り返しのつかない結末を迎えてしまう可能性もあります。
尾行の際は十分に気を付ける必要があります。
対象者に気づかれないように注意
違法な行為にならないとしても、尾行している事が対象者に気づかれるとその後の調査に影響が出たり対象者との関係を悪化させる可能性があります。
探偵の尾行でも行う方法ですが
- 変装をする
- 複数人で尾行する
- 気づかれそうになったら即中止する
などの点に注意して行いましょう。
尾行が必要な時は探偵に相談!
尾行するにはさまざまな違法行為の危険があります。調査を専門としている探偵であっても抵触の危険はあるのですから、一般の方が行うにはなおさら高いリスクを伴うのはやむを得ないでしょう。
とはいえ、尾行をして真実を確かめたいと思う人も多くいるはずです。そのような場合はぜひ探偵に相談してみてください。
探偵は調査スキルやノウハウそして知識を持っていますので、法的枠組みの中で尾行をはじめその他の適切な調査方法により真実を明確にいたします。
尾行はただ追えば良いだけでなく、気づかれることなく法に触れることなく安全に行う必要があります。
無理な調査を行って大きなトラブルになる前に調査のプロに相談しましょう。
まとめ
尾行そのものは違法行為ではありませんが、尾行に気づかれた際に違法になる危険性は大いにあります。
探偵が依頼を受けた内容について尾行や張り込みなどの調査を行っても、それは業務上の任務を遂行しているわけであり、ストーカー規制法や迷惑防止条例には抵触せず合法に行う事ができます。
もし今、尾行をしたい相手がいたり、探偵の尾行が違法にならないか心配で相談できずにいるのなら、安心してご相談下さい。
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