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副業の多様化に伴い、届け出のない「隠れ副業」が業務運営や企業の信用に影響を及ぼす懸念が増えています。本コラムは主に企業ご担当者様を対象に、疑わしい兆候の見分け方、初動で押さえておくべき記録の取り方、そして事案ごとに考える対応の方向性(社内対応の目安/外部相談を検討するポイント)を、あくまで事例として丁寧に整理します。断定は避けつつ、実務で使える簡潔なチェックリストや保存フォーマット例を提示し、感情的な問い詰めを避けて事実に基づく冷静な対応へつなげるための道しるべとしてご活用ください。
隠れ副業とは?企業への影響と背景
副業を認める動きは着実に広がっています。一方で、社内からは見えにくい「隠れ副業」が、気づかないうちに信用へ影響を及ぼすこともあります。まずは、その背景や起こりやすい思い違いを整理し、どこにリスクがあるのかを丁寧に確認していきましょう。小さな兆しを早めに捉えられると、初動で迷わずに対応できます。
隠れ副業とは?定義と判断基準
会社に知らせず、本業の立場や情報・信用(名刺、役職、顧客との関係など)を使って個人として仕事を受ける行為を指します。判断の軸としては、金額の大小にかかわらず「会社の利益とぶつかる可能性」「会社資産(資料・ひな形・アカウント等)の私的利用が疑われるか」「窓口や請求が会社と混在していないか」といった観点が参考になります。最終的な評価は、社内規程や個別事情に応じて行ってください。
よく見られるケース
※以下はあくまで代表例です。実際の判断は、社内規程・契約・状況によって異なります。
- 本業のお客様に「会社には内緒で個人で安く」と提案し、個人名義で請求・受領する
- 勤務時間外でも会社の機材やデータ、ひな形を使って個人案件を進める
- 連絡先を社用から個人へ切り替え、やり取りや支払いを社外で完結させる
一例として、申請・承認があり勤務時間外に行われ、会社の事業と重複せず会社資産が使われていない活動は、一般にトラブルになりにくいとされます。ただし、個別の内容や運用によって判断が変わる点にご注意ください。
副業解禁の流れと現状|人事担当者が押さえるポイント
副業を認める会社は年々増え、働く人にとって学びの機会や収入の柱が広がりました。現場にとっても、社外で得た知見が本業に還るなど、良い循環が期待できます。
一方で、制度や周知が追いつかず、「副業として何を申請し、どこまでなら会社とかぶらないのか」の理解に差が生まれがちです。たとえば、勤務時間外でも会社の道具やひな形を使ってよいのか、同じお客様からの依頼は個人で受けてよいのか。迷いどころは細部にあります。
隠れ副業が企業リスクになる理由
このような周知の差や線引きの迷いが積み重なると、結果として“境界”が曖昧になりやすい点が最大の論点となり得ます。例えば、日中の返信が遅れがちになる、社内のPCやチャットを私用に使う。そうした些細な“ついで”が続けば、本業への集中は崩れます。また、名刺や会社の看板から得られる信用は本来チームの資産です。そこに紐づく顧客情報や見積の考え方が外に流れれば、競争力は静かに削られていきます。問われるのは金額の大小ではなく、やり方にあると言えるでしょう。
副業解禁の誤解と盲点|担当者が注意したいポイント
「勤務外ならOK」「承認さえ取れば免罪符」「社内で作った資料は自分の成果物」など。よくある思い込みですが、どれも落とし穴になり得ます。時間帯を問わず会社の利益や業務と衝突する可能性がある内容は慎重に扱う必要があります。一般的に承認は条件付きであり、活動内容の変更があれば再申請を求める運用が望まれます。また、社内で作成されたひな形や顧客情報は会社の資産として取り扱われることが多く、個人的利用に関しては社内規程で扱いを明確にしておくことを推奨します。
ルール面で注意すべきポイント|就業規則・契約の基本
お客様と会社の情報は外に持ち出さない。同じ顧客・同じ領域では個人の仕事を受けない。働き過ぎにならないよう時間配分も管理する。そして、一般には、勤務中に業務のなかで形になったノウハウやテンプレートは会社に帰属する場合が多いため、これを前提に規程化しておくことが誤解防止に有効です。最終的な帰属の取り扱いは契約条項や社内ルールに依りますので、明文化をお勧めします。
隠れ副業の兆候と事例|本業の立場悪用の見抜き方
本業の信用やお客様との関係範囲を私物化してしまう行為を、具体例と「兆し」を手がかりに分かりやすくご紹介します。連絡先の切り替えや名義の違和感など、小さなズレにご注目ください。
※提示する事例は理解を深めるための仮のものであり、実際の案件における評価は経緯や関係性によって異なります。
顧客横取りの隠れ副業|実例と見抜き方(サイン・時系列)

例:「本業の顧客に対して『会社に内緒で私個人で安く請け負います』と持ちかけ、納品まで行っていた」
典型的な流れ
- 社用アドレスから私用アドレス・個人チャットへ誘導。
- 打ち合わせは社外での実施を提案。
- 社内ひな形や原稿を下敷きに作業を進行。
- 請求書だけ個人名義で発行・受領。
- トラブル時のみ会社窓口へ戻す(利益は個人へ)。
短期的に“お得”に見えても、価格基準の崩れや取引フローの歪みを招き、長期的には顧客関係と社内の信頼を損なう恐れがあります。
顧客横取りの早期発見ポイント
- 見積や進行連絡を口実に私用アドレスへ切り替え要求。
- 請求先の個人名義化の打診。
- 社内報告より先に納品が先行。
小さなズレが複数重なると、早期発見のサインになります。
同業での競合副業|サインと対応方法
社名と個人名を使い分けながら近い領域を受注し、提案書の言い回しや見積の“クセ”が社内と重なるケースがあります。外へ成果が流れ、内では温度差が生まれ、現場負担が増えます。
競合的副業のサイン
- 社外提案が社内ひな形に類似。
- 見積の“クセ”が一致(項目名や単価の並びなど)。
資料の出所確認と取り扱いルールの再周知を行い、必要に応じて申請・承認の見直しを検討するとよいでしょう。※サインの有無だけで断定せず、複数情報の整合で判断してください。
名義貸し・紹介料の見抜き方
社内の実績を“売り文句”に外注を斡旋し、個人口座に紹介料が入るパターンです。取引先からの「紹介料」言及や、外注の偏りが続く場合は、理由の確認と支払経路の照合を行います。
企業が認めやすい副業の条件|申請・承認・非競業の基準

線を守る副業は、本人にも周囲にも安心をもたらします。所定の窓口(人事・労務・直属の上長など)への申請と承認、勤務時間外での活動、会社とかぶらない内容という基本を丁寧に押さえ、透明性で誤解を防ぐポイントを担当者の皆さまの視点で整理します。
社内規定に沿った副業の例|担当者向けガイド
申請と承認があり、内容・期間・範囲が明確であること。活動は勤務時間外に限り、会社の設備やデータは使わない。領域は本業とかぶらず、たとえば語学教室や趣味の延長、社外登壇の謝礼など。こうした線引きが共有されていれば、周囲の不安はぐっと減ります。
副業の管理と情報共有のポイント|透明性の確保
上長や人事が把握し、問い合わせに説明できる状態が続いているか。収益や時間の申告を定期的に見直しているか。透明性が保たれていれば、誤解は小さなうちに解けやすく、本人にとっても続けやすい働き方になるでしょう。
隠れ副業への対応手順|就業規則・社内ルールの整備
まずは慌てず、手順に沿って体制を整えていきましょう。就業規則のわかりやすい言語化、周知のための教育、初動対応の共有という三本柱をそろえることで、“隠れ副業”のリスクを早い段階で抑え、現場の判断がそろい、迷いなく対応しやすくなるでしょう。
就業規則・副業規定の整備方法|テンプレの考え方
まず“線”を文章にします。競合を避ける考え方、情報の扱い、会社と個人の利益がぶつかる場面の考慮。抽象論ではなく、現場の事例とセットで明文化するのが近道です。副業申請の項目や審査の観点、更新のタイミング、違反時の対応も、曖昧さを残さず書き切りましょう。周知は一度で終えず、理解度を測る小テストのような仕掛けが有効と考えられるでしょう。
社内教育とリスク意識の「向上」|ケース活用のコツ
ケーススタディは強い味方です。「どこから利益がぶつかるのか」を実例で学ぶと、判断はぶれにくくなります。私用アドレスや個人クラウドの扱いは代替手段とセットで案内をしましょう。管理職には“兆候の見抜き方”と“初動の言い方”を用意しておくと、不要な対立を避けやすくなるでしょう。
初期兆候の対応方法|一次対応のコツ
顧客からの違和感の声や匿名の通報は、小さな情報でも丁寧に受け止めましょう。最初にやるのは、断定ではなく事実の保全です。メールやチャットの原文を残し、アクセスや持ち出しの履歴を規程に沿って記録する。推測と事実はレーンを分け、感情の温度が上がらないうちに関係部署で方針を決める。その丁寧さが、後のこじれを防ぎやすくするでしょう。
初回の確認(受理→保存→整理→共有)は48時間で行うことが推奨です。なぜならば、24時間では関係者の確保やログ保全が間に合わない場合があり、72時間を超えるとログの上書きや関係者の記憶の風化が進みやすいためです。なお、時間の経過が結果に影響する傾向は一般にも知られており、企業内の確認でも同様と考えられます。ただし、事案の規模や緊急度に応じて24時間版/72時間版へ柔軟に調整していただくとよいでしょう。
以下では、48時間で進める場合の初動対応の流れをご紹介します。
初動対応フロー(48時間で進める場合)|企業の一次対応手順
【1】受理(0〜4時間)
- 一次情報は原文のまま保存(.emlなど)。転記・要約はしない。
- 受付時刻/送受信者/媒体(メール・電話・面談)/件名/添付の有無を記録。
【2】保存(4〜12時間)
- メール・チャット・端末などの関連ログを規程に沿って保存。
- 対象期間、取得者・取得日時・保存方法(改ざんされていないことを確かめる手順)を記録(例:ハッシュ値の取得、タイムスタンプ付与、監査ログの保存)。私物端末(BYOD)や私生活領域には触れない。
【3】分離(並行)
- 事実/推測/まだ分からない点を分け、どれくらい確かな情報か(高・中・低)を付与。
- 名誉を傷つける表現や断定は避け、情報の出どころを明記。
【4】準備(12〜24時間)
- 時系列表と確認証憑リストを作成。質問票は誘導を避け、必要最小限に。
- 原文を提示する際は、個人名などを必要最小限に隠す。同席者・議事録・同意の段取りを整える。
【5】共有(24〜48時間)
- 人事・法務・関係部署で方針決定。暫定措置(案件の一時分離、アクセス権の最小化)を検討。
- 周知範囲は最小限。知らせてくれた方の保護と当事者のケアを明確化し、タスクと期日を割り当てる。
隠れ副業の兆候チェックリスト
- 請求先が個人名義へ変わった/私用アドレスへの切り替え要請
会社の正式フローから外そうとする動きです。いつ・誰が・どの工程で変更を求めたのかを原文で保存します。 - 社外資料が社内ひな形に酷似している
言い回し・レイアウト・作成者や更新日時の一致がヒントです。ファイル情報まで確認します。 - 社用→個人の連絡先切り替え、勤務時間中の応答遅延
日中の応答遅れや不自然な離席が続くか。勤務記録や会議記録と照合して把握します。 - 副業SNSの募集が会社の得意領域と重なる
募集要件・価格帯・実績紹介が社内の提供内容と一致していないか。プロフィールの肩書や成果物の出所も確認します。 - 外注先が不自然に偏り、共有も薄い
固定先への集中や選定理由の不明確さは要注意。見積比較や発注記録の有無を点検します。 - 相場から外れた安価な見積(内部ロジックの流用疑い)
社内の価格基準に近い“クセ”が出ます。比較表を作り、過去案件との整合や根拠を確認します。
副業申請フォームの項目例
- 競業に当たらないか(業界・顧客の重複)
対象業種・提供内容・想定顧客、社内案件との重なりの有無を具体に記載。 - 会社資産を使わない誓約(ツール・データ)
PC/ソフト/クラウド/ひな形・顧客情報の不使用、保存先・持出しルールを明示。 - 活動の時間帯と場所(勤務外/会社設備不使用)
実施曜日・時間帯・作業場所、緊急時の連絡体制を記入。 - 報酬と契約形態(源泉・口座情報の提出)
受注形態(請負/委任など)、おおよその金額・支払時期・入金口座、税務処理の方法を明確に。 - 更新・終了時の報告/違反時の措置
期間・更新条件、内容変更時の再申請、違反時の是正ステップを合意。 - 四半期ごとのレビュー(継続適格性の確認)
稼働時間・収益・健康面・本業への影響を定期チェックし、継続/修正/停止を判断。
人事担当者向けFAQ
Q1. 非競業でも、同じ顧客を社員が個人で受けたい/受けている疑いがあります。どう対応すべきでしょうか?
A. 一般的に慎重な対応が求められる場面では、許可を見送る判断がリスクを低減する場合が多いです。例外を設ける場合には、事前申請の明文化や条件付与を行うなど、合意と記録を残す手続きを整備するとよいでしょう。
- 役割・範囲・連絡先・請求先(会社と個人を完全に分離)
- 使用する機材・データの出どころ、作業時間帯
- 保険・賠償の扱い、報酬の算定方法
- 会社資産(資料・ひな形・アカウント・名刺)不使用の誓約、証跡(承認書・メール原文)保管
Q2. 「自宅PCで作れば問題ない」と主張されました。何を確認したらいいですか?
A. 問題となるのは端末の場所ではなく、使用される資料やデータの出所です。社内資料や顧客情報、見積ロジック等の私的転用を禁止する旨を周知するとともに、申請書や誓約、抜き取り形式の監査などで運用面の担保を図ることが有効でしょう。運用の詳細は自社の体制に合わせて設計してください。
Q3. 退職前の“準備”として取引先に個人で挨拶・提案している兆しがあります。対応はどうしたらいいですか?
A. 在職中の個人的な顧客接触や資料の持ち出しは、リスクを伴う場合があるため注意が必要です。事前に取り扱いルールを周知し、必要に応じて手続きや確認を義務付けることが望ましいと考えられます。顧客接点は会社経由に限定し、退職時にはデバイス・アカウント回収や秘密保持・競業避止の確認を行うなどの手順を設けるとよいでしょう。
Q4. 社外登壇や寄稿の謝礼を社員が受ける予定です。何を整えたらいいでしょうか?
A. 申請・承認フローを前提に、内容が本業と競合しないか、使用素材の出所が会社資産でないかを事前レビューしておくとよいでしょう。所属の表記ルール、謝礼の受領先と利益相反チェック、記録の保管場所を定めます。
Q5. 通報が誤解だった場合、どう収束させますか?
A. 原文保存・時系列整理・推測の分離という基本は変えず、白と判断した理由を最小限の範囲で共有しましょう。通報者保護と関係者の名誉回復に配慮し、ログのアクセス権を必要最小限に制限します。学びは再発防止(周知・教育)に活かします。
Q6. どの段階で弁護士や探偵事務所に相談すべきでしょうか?
A. 法的評価が必要(規程・契約・損害)な場合は弁護士に委ねましょう。社外での接触実態など客観確認が必要なら探偵事務所に相談しましょう。弊社の提供範囲は「調査・事実整理・リスク管理上の一般的助言」に限定されます。目安は、利益相反の疑いが具体化、社内ログで裏取り困難、当事者確認が難航のいずれかです。求めるアウトプット(適法取得・時系列・真正性)を事前に共有してください。
合法的な証拠収集の方法|企業調査の注意点
調査の過程で、関係がこじれることがあります。まずは私たちは残るものを静かに集めることから始めましょう。原文・時系列・推測の分離という三点を土台に、落ち着いて進めていきます。
社内調査の限界と法的リスク|注意すべき点
“真相を早く”という思いが、行き過ぎた追及を招くことがあります。尾行や私物スマホの覗き見は、関係を壊すだけでなく法的な問題にも発展しかねません。
合法的な証拠収集の方法|記録・証言の集め方
鍵になるのは、原文のまま、時系列で、推測と事実を分けることです。業務アカウントでのメールやチャット、アクセスや持ち出しの履歴、営業報告との齟齬、取引先の聞き取りメモ、請求書の名義や入金口座。バラバラの点を並べるだけでも、見えてくる線があります。
時系列記録テンプレート|フォーマット
※記載例です。自社の記録様式に合わせ、案件の内容に応じて項目の追加・削除や変更、24/48/72時間の目安に沿った行入れ替えなど、柔軟に調整してください。
日付・時間 | 事実(観測事実のみ) | 取得元(メール/電話/面談など) | 物証/ログ | 影響 | 次アクション |
9/10 14:05 | 顧客Aより請求先変更要請のメール | 顧客A→担当宛メール | 原文保存済 | 取引信用低下の懸念 | 法務へ共有、請求書控え照合 |
9/10 16:20 | 関連ログ(メール/チャット/アクセス)の保全を実施 | 管理コンソール/サーバーログ | 保全作業記録・ハッシュ・タイムスタンプ | 証拠毀損の防止 | 情報システム・法務へ保全完了を共有 |
9/11 09:30 | 時系列表と確認証憑リストを作成 | 担当メモ/承認済みフォーマット | 時系列表v1(版管理) | 関係者の認識合わせが容易に | 関係部署へレビュー回付、質問票ドラフト送付 |
※推測等の書き込みについては別の文書に記録してください。これにより事実と推測が明確に区別され、後の説明責任を果たす上で重要となります.
探偵の企業調査の使い方|客観調査と証拠化

社内の記録や聞き取りだけでは届かない事実があります。当社は法令に沿った方法で、見落とされがちな外側の動きを静かに確かめ、感情ではなく事実で次の一手を支えます。白でも黒でも、判断のよりどころになる形に整えることが役目です。
業務実態の企業調査で分かること|確認できる範囲
社内で見えるのは、会議体や勤怠、メールの一部といった“内側の記録”が中心です。探偵事務所は第三者として、勤務外に誰とどこで会っていたか、私的な連絡や金銭の流れがないかなど、外側の輪郭を丁寧にたどります。接触の頻度や時間帯、やり取りの導線、支払の経路を点ではなく線として描き、まずは「実際に起きていたのか」を落ち着いて見極めます。
企業調査のスコープ
※確認項目の例です。目的・期間・対象に応じて設計を調整します。
- 社外での接触実態:誰と・いつ・どこで・どのくらいの頻度か(勤務外中心に確認)。
- 取引の流れ:請求や入金の名義・口座、領収と支払の整合、金銭や物品の授受経路。
- 別名義・別ドメインの有無:私用アドレス、個人チャット、別サイトやSNSへの誘導の痕跡。
- 公開情報・周辺情報:登記や業界情報、評判・レビューなどの外形情報。
- 反復性の確認:単発か継続か、曜日・時間帯のパターン。
企業調査報告書の構成
※サンプル構成です。社内フォーマットや案件特性に合わせて項目を調整します。
読み手が判断しやすいよう、報告は簡潔に要点をそろえます。
- 概要:目的/対象範囲/期間・手法/前提条件
- 事実:時系列の整理(観測事実と裏付けを分けて記載)
- 評価:整合点・不整合点、追加確認が必要な論点
- 提言:規程整備や再発防止、社外説明や契約見直しなどの選択肢
- 付録:証跡一覧(取得方法・取得日時・取得者・保存場所)、写真や表、参考資料
企業調査の進め方と期間の目安
※期間は目安とお考えいただくとよいでしょう。対象人数・移動距離・難易度により増減します。
- 受付→仮説設計→予備調査→本調査→速報→最終報告の順で進めます。
- 期間は難易度や対象人数で前後しますが、予備調査1〜2週間/本調査2〜4週間が一つの目安です(緊急時は個別に設計)。
企業調査の依頼前に準備するもの
- 直近のメール原文(.emlなど)、契約書・見積・請求の控え、関係者や日時・場所のメモ、社内規程の該当条文、過去の指摘や通報の記録など。
- すべてがそろっていなくても大丈夫です。分かる範囲でお持ちいただければ、初回面談で不足分を一緒に整理します。
やってはいけない調査
違法または不当な手段で取得した情報は、証拠能力が認められにくいだけでなく、プライバシー侵害やその他法的責任を招くおそれがあり、企業の信用を損ねる可能性があります。したがって、調査や確認を行う際は、法令や社内規程に沿った適法な手法を最優先に採用してください。
具体例としては、以下の行為は多くの場合問題となる可能性が高く、通常は避けるべきです(最終的な評価は管轄する法律・事案の事情によります)。
- 盗聴・盗撮、無断の位置情報追跡(GPS等)
- 私物端末や個人アカウントへの無断アクセス(不正アクセスの該当が問題となる場合があります)
- 住居・私有地・ロッカー等への無断立ち入りや開錠・開封
- なりすましや詐欺的手段による情報取得
- 通信・郵便の秘密や金融情報の不正取得
- 証拠のねつ造・改ざんや虚偽の申述の強要
これらは事案に応じて法的評価が下されますので、疑義のある手段は事前に法務や弁護士に相談してください。
相談の流れ|相談員が伴走します
ご相談では、結論を急がず状況を一緒に相談員が整理します。
- 状況整理(何が、いつ、どこで起きたのかを落ち着いて棚おろし)
- 記録の整え方(メール原文の保存や時系列メモの作り方、社内ルールの確認ポイント)
- 心のケア(決めつけや詰問を避け、関係者への配慮と通報者保護を優先)
- 橋渡し(必要に応じて弁護士・労務・調査チームへ段階的につなぐ)
- 進め方の提案(考えられるリスクと選択肢を共有し、合意いただいた範囲で次の一手を提案)
初回相談では、結論を急がず状況を丁寧に整理し、原文と時系列を整えたうえで、必要に応じて弁護士・労務・調査へ橋渡しします。
隠れ副業から企業の信用を守るポイント
副業を認める企業が増えるいま、会社に申告せずに行う「隠れ副業」が課題となる場面があります。隠れ副業とは、会社の立場や情報・資産を私的に用い、個人として仕事を受ける行為を指します。本業への集中をそぎ、会社の信用や競争力に影響するおそれがあります。
健全な副業の線引きは、次の4点が基本です。
- 申請・承認済み
- 勤務時間外
- 会社の事業とかぶらない
- 会社資産を使わない
とくに顧客の横取り、同業での競合、名義貸しは典型的なリスクと言えます。
リスクを避けるには、就業規則・副業規定の明確化と周知、従業員教育、初期兆候への適切な一次対応が欠かせません。疑いが生じた際は、感情ではなく、原文の保存、時系列での整理、推測と事実の分離を徹底し、必要に応じて探偵事務所など外部の専門家に相談しましょう。
副業は個人と企業の双方にメリットがあります。だからこそ、会社の信用と顧客関係を守るために、ルールに基づいた透明性の高い運用を徹底していくのが望ましいでしょう。
本コラムでご紹介した内容は、一般的な解説と具体例です。最終的な判断や運用は、社内規程・契約、ならびに事案の状況に応じてご検討ください。
判断に迷われた際は、愛晃リサーチへご相談ください。内容は厳守いたします。